吹抜けの抱える問題点を解決する
吹抜けのメリット・デメリットについて
吹抜けと言えば開放的で気持ちの良いもののイメージ!だったのはつい10年前。昨今では「無駄な空間」として評価されがちな吹抜け。
今回はその問題点を解決するために、メリット・デメリットから対策を考えてみたいと思います。
吹抜けのメリット
吹抜けを設けることで得られるものとはなんでしょう?
- ・1階から2階まで伸びる大きな窓、これによって明るい空間に
- ・上からの圧迫を感じない解放感
- ・夏場の熱気が上へ逃げるので吹抜けリビングは意外と快適に
- ・吹抜けリビングを階段ホールにしてしまえば空間の有効利用に
それぞれ専門家の意見はあるかと思いますが、順番に説明しましょう。
大きな窓
1階から2階まで縦に長い窓の空間を取れることで、明るさは断トツ。それはもう高層ビルのエントランスホールをイメージしてもらえばわかるかと思います。この解放感を得られるためなら…という気持ちで吹抜けを設けたいですね。
解放感
もともと90年代に吹抜けが注目されたのは、従来の在来工法では、天井高2300未満の住宅が多かったためです。現在では2500以上の住宅も増えてきましたので、そこまで圧迫は感じませんが、それでも室内で手を伸ばせる空間というのは気持ちの良いものです。
熱気が逃げる
熱気は上へ登っていくので、窓が大きくても意外と1階は暑くなりません。もちろんそのための日差し対策や、熱を逃がすための換気設備を有しますが、夏の軽井沢別荘気分を吹抜けは味わえますね。
階段スペースの有効利用
一般的に階段は縦に熱を逃がすので、廊下に設置されることが多いですが、吹抜けリビングではそのままリビングに階段を設置できます。これによって家族の顔を合わす回数を増やす工夫もできますし、廊下という無駄なスペースを減らすこともできます。
吹抜けのデメリット
メリットよりもデメリットの方が多いと言われていますね。ではどんなデメリットがあるのでしょうか?
- ・冬場、暖房の熱が上へ逃げるので冷える
- ・シーリングファンなどの無駄な設備が必要
- ・建築コストの無駄が多く、坪単価が上がる
- ・吹抜けの窓の掃除が大変
なんだかんだ言って光熱費の無駄が一番痛いところでしょうか。特に冬場は暖房が効いた気になりません。そして坪単価が上がってしまうことも、予算的な余裕の有無が影響します。
吹抜けのデメリット問題を解決して、吹抜けを設けたい!
デメリットはあれど、やはり吹抜けは気持ちがいいものです。根上建築の深軒木家でも吹抜けを採用しています。吹抜けのデメリットを解決して吹抜けを設ける方法を考えてみます。
冬場の寒さ対策を考える
断熱材を変える
冬場の暖房の熱が上へ逃げてしまうというデメリットですが、上へ逃げても温かければいいわけです。そこで根上建築の推奨するセルロースファイバーの断熱材が有効です。セルロースファイバーはしっかりと隙間なく充填できるので、隙間の多いグラスウールよりも格段に断熱性能が上です。
天井高を低くする
昨今の建築傾向は「温故知新」。なぜ日本家屋の従来の天上高が低かったのか。それは長い木材が取れなかったから…いやいやそれもありますが、それだけではありません。お城に至っては城内で刀が振れないようになどのためにわざとフスマが低かったりしましたが、低い天井高は室内が温まるのが早いこと、照明器具の照度を小さく抑えられること、既製品のサッシの高さと合わせられることなど、無駄を省くことができます。
吹抜け以外の1階の天井高を抑えることで吹抜けの全体の高さも抑えます。これで単価上昇分をペイできます。
吹抜け天井は勾配天井に
吹抜け部分の天上を勾配天上にすることで、自然な風の流れを作ります。また勾配を設けることで大きい窓を少しだけ低く抑えることができます。そして勾配屋根のひさしを伸ばし、日よけを作ります。これによって解放感は維持したまま夏場の暑さ対策、高所の窓掃除を解決できますね!!
ひとこと
いかがでしょう?デメリット要素の多い吹抜けですが、設計次第ではそれほど無駄の多い空間ではないような感じがしませんか?昔ながらの日本住宅の吹抜けを取り入れることで、現代らしい新しい吹抜けの形ができそうですね。