建築業界へ入り様々な現場を経験し見てきた中で、自分なりに『いい家』とはどういう家なのかと考えてきました。というのも現代の家づくりでは、あまりに石油化学建材を使うことが多かったからです。確かに価格面や工期短縮を図る上ではいたしかたない面もあるでしょう、しかし家というのは服や車と違い30年、40年…と長い間私たちの生活に密接してゆくものです。目先の損得に目を奪われてしまうと、かえって多額な費用がかかってしまうこともあります。

安価な薄いグラスウールを断熱材に使用したご家庭では、家自体の断熱性能が十分に得られなくなり、冷暖房を多用したために光熱費が必要以上にかかってしまったり、床材に合板でできた建材を使用したご家庭では、数年後に部分的に痛んだ箇所を交換しようとした際、商品が廃番になってしまっており、取り寄せることができず、やもえず全面張替えをすることになってしまったりと、家を購入される時点では安価に納まった様に見えても、長期的に見るとランニングコストや修繕費が高くなってしまうのです。

その点、自然素材の木などの建材は再生が可能なだけでなく、どこにでもある材料なので手に入りやすく加工もしやすいため部分補修もリメイクも容易に行うことが可能です。また、無垢（むく）の木は年月を経るごとにその味わいも愛着も増してきます。

最後に、ある著者が書いた一文を引用させてもらいます。
「法外と思えるほどの高い大きな買い物よりも、度重なるガラクタ買いのほうが、結局は高くつき、高くても良い買い物は、それだけで人生に満足感を与え続け、それを取り出して眺めるたびに喜びを与えてくれるものです」

＝＜　シンプルに生きる／ドミニック・ローホー　＞＝