熊本の地震から得た教訓。それを活かした動きがはじまります。

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耐震補強した建物ですら危険な状態に

今回熊本の大地震で被害を受けたのは、一般の住宅だけではなく、耐震補強で補強された役場などの建物も含まれる。このことから、改正された耐震基準でも耐震性能としてはまだ不十分なのではないかという動きが始まった。

家全体の耐震補強は難しい

いつ来るとも分からない地震のために備えたいけれども、家全体を補強する予算がない場合は、せめて寝室の1部屋だけでも補強してほしいと専門家は言っております。部分的な補強工事だけでも効果は期待できますからね。

古い家よりも新しい家の方が壊れなかった

当たり前に感じるかもしれませんが、古い家の耐震補強を行っていた家であっても、比較的新しい家には勝てなかったということですね。やはり構造材が少しずつ弱まっていることもありますが、構造材の太さや施工方法に新旧の差を感じざるをえません。使用する金物も改正後のものと、それ以前のものでは大きく違います。地震対策で大規模な補強工事を行うのであれば、新築にする方がメリットが大きいのかもしれませんね。

観測史上初めて、震度7を2回記録した熊本地震で、耐震工事をした役場や避難所が損傷し、使えない状態になった。大地震の続発は、1981年に定められた現行の耐震基準の想定外であり、国も被害状況を踏まえた上で、基準について再検討する方針だ。

「数年前に耐震工事を終えていたのに…」。熊本県益城町の職員は頭を抱える。鉄筋コンクリート造り3階建ての町役場は、外付けフレームで補強していた。14日夜の震度7には耐えたが、16日の本震で亀裂が入り、倒壊の恐れで立ち入り不可となった。

熊本市でも、避難所となっている小中学校24校の体育館で「筋交い」が破断するなど損傷し、使用禁止に。避難者はより安全な校舎に移った。「大地震の続発でびっくりしている」と、同市教育委員会施設課の担当者は訴える。市内の公立小中学校は、2012年度末に耐震化率100%を達成していた。
東京理科大の北村春幸教授(建築構造学)は「大地震は二度来るとボディーブローのように効いて被害が大きい。一度目で壊れて強度が落ちた建物は、むち打つように大きく揺れて壊れやすい」と言う。「耐震基準は最低限の基準。免震や制震など、被害軽減のための対策が必要だ」とも。
一方、国土交通省の担当者は「確かに耐震基準では、繰り返しの大地震は想定していない。しかし全く対応していないわけではない。60秒以上の揺れも想定して、構造計算をしている」と話す。長時間の揺れは、複数回の揺れに相当するという考え方だ。耐震基準はこれまでも大地震のたびに変更が加えられており、「被害状況を調査した上で検討したい」とする。

耐震基準をクリアしていても万全というわけではないが、新しい建物の被害が少なかったのは事実だ。日本木造住宅産業協会(東京都港区)の坂田徹さんは「全国には900万戸の耐震基準を満たさない住宅がある。空き家も入れるともっと多い。家全体が無理なら、せめて寝室だけでも補強をしてほしい」と話している。

●耐震基準  現在の国の耐震基準は建築基準法に基づき、1981年に導入された。「震度5強の地震でほとんど損傷しない。震度6強から7に達する大地震で損傷はしても倒壊や崩壊はしない」ことが目安だ。震度7を記録した二つの大地震ではこの基準が効果を発揮した。95年の阪神大震災では、基準を満たす建物の被害は、それまでの古い基準の建物の三分の一程度。東日本大震災でも被害は小さかった。だが、両地震とも震度7の強い揺れは最初の一回だけだった。2013年の住宅耐震化率は82%。

●地震保険普及進まず  地震による建物の倒壊や火災が相次いだ熊本、大分両県で、国と保険会社が共同で運営する地震保険に加入する世帯の割合が2~3割にとどまっていることが分かった。政府と熊本県は住宅が損壊した被災者に最大300万円を支援するが、建て替えには不十分で、被災者の住宅再建の負担は重くなりそうだ。

地震保険は、補償額が巨額になるため民間保険会社だけでは制度を維持できず、政府が支払いの一部を負担することで成り立っている。損害保険料率算出機構によると、2014年末時点の地震保険の世帯加入率は全国平均で28.8%だった。東日本大震災前の10年3月と比べると5.8ポイント上昇したが、加入率は地域ごとに大きな差がある。熊本(28.5%)や大分(22.1%)、長崎(13.6%)など福岡を除く九州各県は全国平均を下回った。これまで地震が少なかったことが影響したとみられる。
都道府県別の世帯加入率の上位には、宮城(50.8%)や愛知(38.7%)など、東日本大震災の被災地や住宅価格が高い都市部が名を連ねた。
地震保険の保険料は都道府県によって異なり、木造の場合、保険金1,000万円当たり年間で10,600~32,600円となる。どこの保険会社で契約しても保険料は変わらない。耐震性能などによって割引きもある。

中日 2016年04月22日朝刊